UR都市機構 / 大阪城東部地区 森之宮「ほとりで」は、都市の大きな更新のただ中にある森之宮という場所を、感性都市論の視点から読み解き、これからの都市価値へ接続していくためのプロジェクトである。
森之宮は、再開発や新たな都市機能の導入が進む一方で、上町台地と水辺の地形的背景、団地の暮らしの蓄積、地域文化、人以外の存在を含む環境の重なりを持つ場所でもある。
このプロジェクトは、そうした森之宮固有の重なりを観察し、言語化し、今後の都市実装へつなぐための試みである。
Context|どのような都市的背景や課題があったか
森之宮を含む大阪城東部地区では、都市更新が進み、新しい人の流れや機能が流入しつつある。
その一方で、この場所には、これまで積み重なってきた暮らしの時間、地形や環境に由来する大地性、地域の文化や記憶が存在している。
課題は、新しい都市機能を加えることだけではなく、すでにこの場所にある価値をどのように読み取り、未来へ接続するかにあった。
つまり、開発によって何を新しくつくるかだけではなく、何をこの場所固有の価値として継承し、再編集するかが問われていた。
Question|何を問いとして設定したか
このプロジェクトで設定された問いは、
大きく変わりつつある森之宮において、何を新しく加えるかではなく、何をこの場所固有の価値として読み取り、未来へ接続するか
という問いである。
その際の重要な視点は、森之宮を人間中心の開発対象としてだけではなく、暮らし、地形、記憶、文化、生態環境が重なり合う都市として捉え直せるかどうかにあった。
言い換えれば、森之宮を「人と、人以外と。」が交わる場所として再定義できるかが、この事例の中心的な問いであった。
Method|どのような観察・対話・設計・実験を行ったか
方法としては、まず森之宮を単なる再開発エリアとしてではなく、複数のレイヤーが重なる都市として観察する視点を導入した。
地形、環境、歴史、暮らし、現在の営みを重なりとして捉え、森之宮という場所を読み直すことから始めた。
また、「ほとりで」を拠点として、住民、学生、企業、クリエイターなどが交わる場をつくり、対話、リサーチ、ナレッジシェア、フィールドワークを通じて、森之宮の多面性を整理した。
この方法は、都市を机上で定義するのではなく、実際の場と関係性の中で感性価値を観察し、言語化し、構想へ返していく実装プロセスであった。
Output|どのような成果物や変化が生まれたか
このプロジェクトの成果は、単一の制作物ではなく、森之宮という場所の価値を再定義するための視点と基盤が立ち上がったことにある。
第一に、森之宮を単なる開発対象ではなく、地形、暮らし、文化、環境が重なる場所として捉える言語が生まれた。
第二に、「ほとりで」が、暮らしと学び、観察と対話、実験と実装をつなぐ拠点として位置づけられた。
第三に、感性都市論の視点が、具体的な都市プロジェクトに適用されうることが示され、森之宮がその実装フィールドとして位置づけられた。
Insight|その事例から何が見えてきたか
この事例から見えてきたのは、都市価値は新しい施設や機能だけによって生まれるのではなく、すでに存在している複数の層をどう読み取り、どう関係づけるかによって立ち上がるということである。
森之宮の価値は、未来の開発計画だけでなく、地形的背景、団地の暮らし、地域文化、人以外の存在との関係が重なることで生まれている。
その意味でこのプロジェクトは、感性都市論における「都市を人だけでできたものとして見ない」という視点を、実際の都市プロジェクトに接続した事例である。
また、都市体験の観察を構想や設計へ返すためには、分析だけではなく、拠点、対話、実験を伴う実装基盤が必要であることも明らかになった。
Next|今後どのような実装へ展開しうるか
今後は、森之宮で読み取られた感性価値を、より具体的なプログラム、運営、指標、空間編集へ接続していくことが考えられる。
たとえば、「ほとりで」を拠点にした継続的な観察や共創プログラム、まち感性指標の設計と運用、周辺エリアにおける滞在価値や回遊価値の再編集などへ展開しうる。
また、この事例は森之宮固有のものにとどまらず、再開発が進む他地域においても、何を新しくつくるかの前に、何を場所固有の価値として継承し、再編集するかを問う実装モデルとして応用可能である。